トーキョーブックガール

海外文学や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いています。

『風と共に去りぬ』 マーガレット・ミッチェル

宝塚の『風と共に去りぬ

私が初めて『風と共に去りぬ』を知ったのはまだ小さい子供だった頃。

当時神戸では、宝塚歌劇の舞台を生中継するというとんでもない贅沢な番組が(調べてみました。関西テレビの「タカラヅカ花の指定席」です。)、毎週土曜に放映されていたのだ。

おそらく雨が降り続いていた梅雨の1日だったと思う。いつもは外出することが多い土曜の昼間、家族全員でテレビの前にいたのだから。

ちょうど宝塚生中継が始まる時間だったので、『風と共に去りぬ』を観ることになったのだ。もう開幕直後から、私は虜になってしまった。

スカーレットが綺麗!こんな綺麗な女の人いる!?

レッド・バトラーが渋くて格好いい!こんな素敵な男の人いる!?

まさに夢の世界だった…(うっとり)。

キラキラした服を身にまとった美しいひとたちが歌ったり踊ったり。

アトランタ〜、アトランタ〜、ラッラララララ〜♪」にはまってしまって、妹とずっと踊っていた笑。今でもふとした時に頭の中で流れます笑。

生中継ですから30分の休憩もある。その間はお茶を入れたりお菓子を居間へ運んだりしながら、早く続きが見たくてうずうずしていたのをよく覚えている。

3時間があっという間だった。

宝塚ファンになったのは大人になってからなのだが、あの衝撃は今でも忘れられない。

残念なのは、あまりに昔のことなのでDVDなんてもちろんなく、あの舞台を再び観ることができないこと、、、

でも、最近執念で調べてみたところ分かりました!おそらくあれは、1994年5月から6月にかけて宝塚劇場にて上演された雪組の『風と共に去りぬ(スカーレット編)』だったということが。

スカーレットは一路真輝さん。本当に、美しく気高かった。こんなに傲慢でわがままなのに、観客がいつだってスカーレットの味方をしてしまうくらいに。

レット・バトラーは役替わりだったのだが、私が見たのは轟悠さんだったのではないかな…と思う。

そしてそんな轟悠さんが、20年を経てもまだレット・バトラーを演じていることがもう、本作と同じくらい衝撃である。

全く変わってない…むしろ渋みがましていて、バトラー役が成熟してる…。

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大好きな星組の2014年レット・バトラー編も観賞しました。紅ゆずるさん&礼真琴さん。

離婚を経て帰ってきたスカーレット。はねっかえりな性格を、拗ねるポーズや表情で醸し出しつつ、落ち着いた歌声で人生経験を重ねた(冒頭から、もう16歳のスカーレットではないのだから)雰囲気を表現していてとても素敵だった。

バトラーは、酒に酔って自暴自棄になるシーンが非常にリアリティあり。

それからベル役の天寿光希さんがすごく良かった!外見と内面の美しさが際立っていた。

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原作『風と共に去りぬ』 

10代になってから原作の『風と共に去りぬ』を読んだ。世界文学全集に入っていたんじゃないかな。分厚くて持ち運びできないので、もっぱら家の中で。

冗長なところも多々あるのだが、これはただのメロドラマだとは言ってしまえないような魅力が確かにある作品だ。

背景の南北戦争、southern belleの原型としてのスカーレット。南部に生きて、南部を愛し、復興したいと思い続ける人。その故郷への強い思いに胸を打たれる。

そして、どう考えても道徳的に正しいのはメラニーなのに、ついつい「メラニーさえいなければ!」とスカーレットの気持ちになって読んでしまうほどの圧倒的魅力。

その人間臭さがいい。

冒頭の文章から目が惹きつけられる。

Scarlett O'Hara was not beautiful, but men seldom realized it when caught by her charm as the Tarlton twins were. In her face were too sharply blended the delicate features of her mother, a Coast aristocrat of French descent, and the heavy ones of her florid Irish fater. But it was an arresting face, pointed of chin, square of jaw. Her eyes were pale green without a touch of hazel, starred with bristly black lashes and slightly tilted at the ends. Above them, her thick black brows slanted upward, cutting a startling oblique line in her magnolia-white skin - that skin so prized by Southern women and so carefully guarded with bonneets, veils and mittens agains hot Georgia suns.

スカーレット・オハラは決して美人ではなかった。しかしタールトン家の双子がそうであったように、彼女の魅力の虜となった男性は、そのことにはほとんど気づかなかった。彼女の顔には、フランス系の海岸貴族である母親の繊細な目鼻立ちと、赤ら顔のアイルランド人である父のしっかりとした特徴が鮮やかに混じり合っている。くっきりと尖った顎、四角い輪郭など、はっと目を引く顔だった。瞳は茶色みのない薄い緑色で、濡れたような黒い睫毛にふちどられ、目尻はほんの少しつりあがっていた。瞳の上には、濃く黒い眉が鋭角に切れ上がり、マグノリアの花のような白い肌に印象的な斜線を描いている。南部の女性は白い肌を慈しんでおり、ボンネットやヴェール、手袋をすることでジョージアの強い日差しから注意深く守った。(訳:tokyobookgirl)

自身でも最後に気づくが、スカーレットが愛したのはアシュレではなく南部の面影。美しく、気だるげで、全てがゆっくりと進んで行く南部を代表するような男性。彼はだからこそ頼りなく、自分では何もできないのだ。決して変わることができない人。

そして、そういうところをスカーレットは愛しているのである。

でもスカーレット自身はそういう人間ではない。典型的南部女性のつもりでも、いつしか男性に負けないほどの商才や独立性を身につけ、新しい世界を切り開ける人。

まさに野生の馬のような女なのだ。そして彼女が本当に必要としているのは、自分と並んで人生を駆け抜けていく野生の馬(レット・バトラー)、なのではないだろうか。

それに気づいた時は時すでに遅しでも、スカーレットは決してあきらめることはない。明日は明日の風が吹くのだから。

岩波からも新潮からも、2015年に新訳がでた様子。

こちらも読んでみたいなと思った。 

風と共に去りぬ(一) (岩波文庫)
 
風と共に去りぬ 第1巻 (新潮文庫)

風と共に去りぬ 第1巻 (新潮文庫)

 

 

ヴィヴィアン・リーの美貌

映画版『風と共に去りぬ』も大好きで、何度か観ている。細かい点まで非常に原作に忠実に再現されていると思う。

そして…ヴィヴィアン・リーの美しさ!これにつきる。

よくこんな、小説から抜け出てきたような美女を見つけ出したものだ。世界で一番素晴らしいキャスティングではないだろうか。

まさにスカーレット。冒頭では、彼女はそれほど美しくは見えないんですよね。

でもその表情を眺めていると、自由奔放な態度やアシュレへのいじらしい恋心、プライドが次々に現れて、「あれ…めちゃくちゃ美人!」に見えてくる。

特にこの眉毛。ヴィヴィアン・リーの顔は決して左右対称ではなく、右の眉が少しつり上がっているんですよね。器用に右の眉だけ動かすシーンもいくつかあるのですがそれがもう!!神がかり的に美しい。

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 メラニーだって、ゴシップ・ガールのブレア(レイトン・ミースター)似の美女なのだが、スカーレットの圧倒的な美しさの前では霞んで見えてしまうくらい。

続きを読みたい!観たい!と思ってしまうほど、素敵な作品です。

 

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『文学効能辞典』では、「美貌と若さを誇っている人」 にすすめられていたこの小説。

個人的にはスカーレット=「いわゆるきれい売り*1の正反対を行く女」なので、恋愛における反面教師としての読み方もおすすめ。

文学効能事典 あなたの悩みに効く小説

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*1:恋愛の神様ブロガー・ゴマブッ子さんによる言葉。常に最高の自分を相手にプレゼンテーションするという意味。