トーキョーブックガール

海外文学や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いています。

夏に読みたい海外文学 13冊

みなさま、台風の影響はどうでしたか?

トーキョーブックガールです。

そして再び暑くなってきましたね。

夏が大好きなので、暑い暑いと文句を言ってへたれている瞬間すら、冬の寒さに震えているよりはマシだと思ってしまう私です。

さて、夏にこそ読みたい海外文学をリストにしてみました。

中身はもちろん、題名も夏にまつわるものを選んだので、夏休みのお供にぜひいかがでしょうか。

 

1. 『観光』

タイ人作家による短編集。

観光が一大産業となっているタイで、貧しさを抱えながらも日々生活している人々を描き出している。

盲目になりそうな母と旅する少年、観光地でアメリカ人の女の子に恋する青年、カンボジア難民の女の子。

どこか苦い後味の残る、味わい深いお話ばかり。

これはラープチャルーンサップの処女作なのだが、彼はこの作品以外何も書いていないのだ…。

素晴らしい物語ばかりで、もっと彼の小説を読みたいなと思うが、今はどうも消息不明だそうで!

マイペンライのタイ人らしいといえば、らしい。

作家業からは足を洗ってしまったのだろうか。

観光 (ハヤカワepi文庫)

観光 (ハヤカワepi文庫)

 

 

2. 『これもまた、過ぎゆく』

現代スペイン人作家ミレーナ・ブスケツによる、ある夏休みの物語。

裕福な家に育った40代女性。

著名な母の陰に隠れるようにして生きてきた。

そんな母が亡くなり喪失感に苦しむ彼女は、母が住んでいたカダケスで夏休みを過ごすことにする。

元夫2人、息子2人、友人とその恋人たち、自身の愛人まで一緒に。

ハチャメチャな人間関係にまず目が行きますが、40代になっても母の影響下から抜け出せない&抜け出したくない複雑な娘心がこれでもかと描かれる。

サガンウッディー・アレン、アルモドバルの映画を彷彿とさせる半自伝的小説。

これもまた、過ぎゆく

これもまた、過ぎゆく

 

 

3. 『美しい夏』

イタリア文学のネオレアリズモを代表する作家、パヴェーゼ

あのころはいつもお祭りだった。家を出て通りを横切れば、もう夢中になれたし、何もかも美しくて、とくに夜にはそうだったから、死ぬほど疲れて帰ってきてもまだ何か起こらないかしらと願っていた、あるいはいっそのこといきなり夜が明けて人々がみな通りに出てこればよいのに、そしてそのまま歩きに歩きつづけて牧場まで、丘の向こうにまで、行ければよいのに。

という熱狂的に美しい文章から始まるこの小説は、16歳のジーニアと19歳のアメーリアという2人の少女の青春を描いている。

夏は何度も巡ってくるけれど、この夏とはもう二度と会えない…という郷愁を誘う物語。

大人にこそ読んでいただきたい1冊。

美しい夏 (岩波文庫)

美しい夏 (岩波文庫)

 

 

4. 『夏の夜の夢』

 『夏の夜の夢』といえば『ガラスの仮面』を思い出してしまう、、、ええ、ガラかめファンでございます。

妖精がいたずらして2組の男女カップルの思いが交錯し、大騒ぎに。

喜劇なので非常に読みやすく、登場人物全てが印象的な名作。

シェイクスピア作品にしては珍しく女性のキャラクターが充実しており、魅力的なのもポイント。

可憐な愛され女子ハーミアと、肉食系女子ヘレナ。

ガラスの仮面』では、日比谷公園を彷彿とさせる大会堂で夏の夜、上演していましたね!マヤのパック!

夏の夜の夢・あらし (新潮文庫)

夏の夜の夢・あらし (新潮文庫)

 

 

5. 『ある微笑』

サガンは夏の物語をたくさん書いていて、デビュー作『悲しみよこんにちは』も夏休みのお話なのだが、今日はこちらを。

『ある微笑』は彼女の2作目の小説で、『悲しみよこんにちは』に負けるとも劣らずな逸品。

主人公のドミニックは大学生の女の子。

同い年の素敵なボーイフレンドがいるにもかかわらず、彼の(既婚の)叔父を好きになってしまう。

そんな一夏の物語。

これはズバリ、失恋した直後や恋愛で辛い思いをしている時におすすめである。

日にち薬という言葉があるが、癒えない傷はないということを、恋愛の達人サガンは教えてくれる。

ある微笑 (新潮文庫)

ある微笑 (新潮文庫)

 

 

6. 『真夏の航海』

みんながヴァカンスに旅立ち、誰もいなくなる真夏のニューヨーク。

1人取り残された17歳のお嬢様グレイディは、ブルックリン出身のユダヤ系の男の子クライドと出会い、両親には言えない恋を楽しむ。 

夏のfling(遊びの恋)のつもりがだんだんとその関係は抜き差しならないものになっていき、2人の間に横たわる社会格差も無視できないものとなる…。

若き日のカポーティが書いた、非常に勢いのある物語。

 

7. 『青い麦

16歳のフィリップと15歳のヴァンカは幼馴染。

親同士も仲が良く、毎年夏は一緒に海の別荘を訪れる。

いつも仲良く遊んでおり、お互いに好意を抱いているフィリップとヴァンカだが、ちょうど思春期にさしかかった今年の夏。

フィリップは妙にヴァンカを意識してしまい、今までと同じように接することができない。

そんな時、カミーユ・ダルレー夫人という美貌の女性がフィリップの前に現れて…。

いつまでも子供のままではいられないという事実を突きつけられるような、決定的な一夏が描かれている。

ちなみに邦題は『青い麦』だが、フランス語の題は"Le blé en herb"(殻の中の麦、未熟な麦)。

そして英訳は"Green Wheat"。

青と緑のperceptionの違いって面白いですね。

日本語では未熟、若者=青ですものね。

青い麦 (集英社文庫)

青い麦 (集英社文庫)

 

 

8. 『世界のすべての7月』

村上春樹の翻訳で一躍注目を集めたオブライエンの作品。

時は2000年7月7日。1969年に大学を卒業した男女が31年ぶりに同窓会で再会。

ヴェトナム戦争を経験した者、カナダに亡命した者、青春時代の恋愛をひきずる者、重婚した者(!)、それぞれの人生の軌跡を振り返る。

学生運動主導者、チアリーダー、ヒッピー、みんなそれぞれ人生の時間を重ね、同じように年を取っていく。

50歳というと肉体的には変化しても、精神的には20代とさほど変わらないのだろうなとしみじみ感じた。

世界のすべての七月 (文春文庫)

世界のすべての七月 (文春文庫)

 

 

9. 『異邦人』

夏といえば『異邦人』は外せない1冊。

照りつける日差しを、ページの間から感じられるような小説である。

主人公のムルソーは母の死を経験し、夏の暑さにやられ、 魔がさしたように犯罪を犯してしまう。

不条理ですが、誰にでも起こりうる衝動を描いていて、人間とはこういうものなのかもしれないなあと思えてしまうのだ。

異邦人 (新潮文庫)

異邦人 (新潮文庫)

 

 

10.『夏への扉

夏になると必ず書店の目立つところに置かれているこのSF小説

1956年に発表された作品だが、ロングセラーである。

恋人に裏切られ、会社を乗っ取られた主人公は絶望し、愛猫ピートと2人で冷凍睡眠につく。

そして未来で目覚めると、そこには…

タイムトリップの話なのだが、著者自身が1970年代や2000年代にタイムトリップしていたのでは?と疑ってしまうほど、現代的。

スタートアップ企業の社員のやりとりはまるで今日のシリコンバレーを彷彿とさせるし、ルンバやCADのソフトウェアみたいな製品が出てくるし。

IT畑の方、猫が大好きな方、ハッピーエンドのラブストーリーが読みたい方…にオススメ!

夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)

夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)

 

 

11.『レクイエム』

1932年7月30日。7月最後の日曜日に、物憂げなリスボンの街で死者たちに出会い、時間を過ごし、お別れをする「わたし」。

タイトルの通り優しい雰囲気のお話です。 

レクイエム (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

レクイエム (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

 

 

12. 『結婚式のメンバー』

村上春樹訳によって再出版された物語。

「緑色をした、気の触れた夏」だった、という印象的な文章で始まる。アメリカの南部が舞台なので、熱く気だるい、街全体が昼寝しているような夏が美しく描写されている。

1940年代の12歳の女の子が過ごした一夏のお話。何が起こるというわけでもないが、子供から大人への第一歩、世界が変わってしまうような夏である。 

結婚式のメンバー (新潮文庫)

結婚式のメンバー (新潮文庫)

 

 

13. 『ハローサマー、グッドバイ』

特に日本で圧倒的な人気を誇るマイクル・コーニイのSF小説。とある星に住む男の子ドローヴが、避暑のためパラークシという港町を訪れるところから物語が始まる。宿屋の娘、ブラウンアイズとの恋愛模様を中心に描かれた青春ロマンス。非常に寒い星なので、swear wordsが「氷」に関係するものばかりというのが、面白い。

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

 

 

失われた時を求めて

番外編です〜。

夏休みにしか読めない小説といえば、やっぱりこれは外せないのではないだろうか。

私も今ちょうど『ソドムとゴモラ』を読んでいるところ。

毎年夏休みに読み進めて、早10年…(!)。

まだ半分しか読めていないことにびっくりだが、まとめて時間が取れる時でないとなかなか味わえないんですよね。

失われた時を求めて(1)――スワン家のほうへI (岩波文庫)

失われた時を求めて(1)――スワン家のほうへI (岩波文庫)

 

それではみなさま、今夏もhappy reading!