トーキョーブックガール

海外文学や洋書レビューを中心に、好きなことをゆるゆると書いています。

"China Rich Girlfriend" Kevin Kwan

デビュー作"Crazy Rich Asians"が大ヒットしたシンガポール出身の作家Kevin Kwan(ケヴィン・クワン)。

*"Crazy Rich Asians"のレビューはこちらから。

tokyobookgirl.hatenablog.com

 2作目"China Rich Girlfriend"も、"Crazy Rich Asians"に登場した一族を描いた物語。

China Rich Girlfriend

China Rich Girlfriend

 

 1作目と同じく、複数の登場人物それぞれに焦点を当て、章ごとに舞台と主役が変わる複数プロット同時進行系ストーリー。

一番スポットライトが当たるのは、やはりRachel & Nicky (Nicholas)カップル。

中国系アメリカ人Rachelの出生の謎が明らかに。父親はRachelが幼いころ中国で亡くなったと聞かされていたものの、実は生きていた(しかも戸籍上の父親とは別人)ということが判明!本当の父親はなんと、中国で大金持ちになっていた…。そんな父親に会うため、Rachelは中国本土へ向かう。

何が面白いって、シンガポール・上海・香港と、色々な中国文化圏の都市が舞台となっているところ。前回はシンガポールがメインでしたが、今回は上海と香港の様子もバッチリ描写あり。それぞれの社交界で旧家出身のソーシャライツが優雅に羽ばたいており、他の都市のお金持ちともコネクションがある。ですが、NickyやいとこのAstridのような「実はアジア有数のお金持ち旧家出身だが、露出を嫌うため全くメディアに登場しない」人たちはシンガポール以外では無名に近いので、中国では「アレ誰よ?」的扱いを受けてしまったりするのです。それもまたオツというか、読者としては楽しんで読めるエピソードが盛りだくさん。

題名にもなっている"China Rich"。作中では、

These people aren't just everyday rich with a few hundred million. They are China rich!

みたいに使用されている。いわく、中国本土のお金持ちは、ただのお金持ちじゃない。世界標準をはるかに超えている。

週末は自分でカスタマイズし、ヨガスタジオ(!)を併設したプライベートジェットでパリにひとっ飛び!なんてお金持ちのボンボンや甘やかされたお嬢様の描写には目を見張る。

が、そんなお嬢様のご両親の頭には、娘の結婚のことしかない。「まだこんなに若いのに結婚させたいなんて、だったらどうして私を先進的な学校に入れたの?結婚するためだけに今まで生きてきたわけじゃない」というお嬢様の嘆きが皮肉…。

そして、Rachelの実の父親が"China rich"だと知ったNickyの毒母、Eleanorの手のひら返しには口あんぐり…。あんなにRachelのこと嫌っていたのに。

また、美貌を武器にのし上がった香港のソープオペラスター、Kitty Pong。1作目では億万長者漁りしているところが描かれていたが、2作目では結婚し、香港の社交界の花になろうと四苦八苦。コンサルタントを雇い、「お金目当てに億万長者と結婚した二流芸能人」という汚名を返上しようと頑張る!

コンサルタントがKittyに渡す「読書リスト」がこれまた面白い。

Snobs by Julian Fellowes

The Piano Teacher by Janice Y. K. Lee

People Like Us by Dominick Dunne

The Power of Style by Annette Tapert and Diana Edkins

Pride and Avarice by Nicholas Coleridge

The Soong Dynasty by Sterling Seagrave

Freedom by Jonathan Franzen

D. V. by Diana Vreeland

A Princess Remembers: The Memoirs of the Maharani of Jaipur by Gayatri Devi

Jane Austen- complete works beginning with Pride and Prejudice

Edith Wharton- The Custom of the Country, The Age of Innocence, The Buccaneers, The House of Mirth (must be read in strict order- you will understand why when you finish the last one)

Vanity Fair by William Makepeace Thackeray

Anna Karenina by Leo Tolstoy

Brideshead Revisited by Evelyn Waugh

Anthony Trollope- all the books in the Palliser series, beginning with Can You Forgive Her?

日本語訳&解説をつけてみた。

"Snobs" ジュリアン・フェロウズ

2004年にイギリスで出版された、英国の現代貴族の結婚についての物語。フェロウズは、Kwanも多大に意識していると思われる『ダウントン・アビー』の脚本家。

Snobs: A Novel

Snobs: A Novel

 

 

 "The Piano Teacher" Janice Y. K. Lee

1940-50年代の香港を舞台とした、お金持ち一家の子供のピアノの先生として雇われた既婚女性と、お抱え運転手のラブストーリー。Leeは香港出身の、韓国系アメリカ人作家。

The Piano Teacher

The Piano Teacher

 

 

 "People Like Us" Dominick Dunne

 シンシナティからニューヨークに出てきて億万長者となった夫婦。しかしハイ・ソサエティは新興成金を拒み、社交界の仲間入りができない…。

People Like Us

People Like Us

 

 

 "The Power of Style" アネット・タパート、ダイアナ・エドキンス

これは既に絶版。Goodreadsによると、ココ・シャネルやポーリーン・ロスチャイルド、ダイアナ・ヴリーランドといった女性がスタイルについて語った本だそう。

 

 "Pride and Avarice" ニコラス・コールリッジ

大手の雑誌社コンデナストの英国社長、コールリッジによるコメディ。イギリスのお金持ちと、新興成金の戦いを描いている。

Pride and Avarice: A Novel

Pride and Avarice: A Novel

 

 

『宋家王朝』 スターリング・シーグレーブ

「一人は金を愛し、一人は権力を愛し、一人は国家を愛した」とされる宋家三姉妹の物語。シーグレーブは歴史家です。

宋家王朝――中国の富と権力を支配した一族の物語(上) (岩波現代文庫)

宋家王朝――中国の富と権力を支配した一族の物語(上) (岩波現代文庫)

 
宋家王朝――中国の富と権力を支配した一族の物語(下) (岩波現代文庫)

宋家王朝――中国の富と権力を支配した一族の物語(下) (岩波現代文庫)

 

 

『フリーダム』 ジョナサン・フランゼン

*書いた後に打ち消されている一冊。

フリーダム

フリーダム

 

 

 "D. V." ダイアナ・ヴリーランド

 伝説のファッショニスタ。

D.V.

D.V.

 

 

"A Princess Remembers: The Memoirs of the Maharani of Jaipur" ガヤトリ・デヴィ

「美しい王妃(マハラーニー)」として名高かったデヴィの自伝。もうとにかく絶世の美女!周りの反対を押し切ってジャイプール家の三番目の妻となったり、シフォンでサリーを仕立てたり、数多くの伝説を残しました。これ、読んでみたい。

A Princess Remembers: The Memoirs of the Maharani of Jaipur

A Princess Remembers: The Memoirs of the Maharani of Jaipur

 

 

高慢と偏見』をはじめとしたジェイン・オースティンの著書全て。

全て=長編小説6冊だけですものね。オースティンの小説の価値観は、中国系ハイ・ソサエティの価値観そのものなので、納得の選択。

高慢と偏見〔新装版〕 (河出文庫)

高慢と偏見〔新装版〕 (河出文庫)

 

 

 イーディス・ウォートン。『国の習慣』、『汚れなき時代(エイジ・オブ・イノセンス)』、『バッカニアーズ』、『歓楽の家』(この順番で。どうしてかは、最後の本を読めば分かります)。

 1870年代のNYにおける上流社会の物語。

エイジ・オブ・イノセンス―汚れなき情事 (新潮文庫)

エイジ・オブ・イノセンス―汚れなき情事 (新潮文庫)

 

 

『虚栄の市』ウィリアム・メイクピース・サッカリー

 19世紀初頭のロンドンの上流階級を痛烈な批判・風刺した作品。

虚栄の市〈一〉 (岩波文庫)

虚栄の市〈一〉 (岩波文庫)

 

 

 アンナ・カレーニナ』レオ・トルストイ

アンナ・カレーニナ 1 (光文社古典新訳文庫)
 

 

『回想のブライズヘッド』イーヴリン・ウォー

 失われつつある貴族社会を懐かしみ、ウォーが書いた小説。

回想のブライズヘッド〈上〉 (岩波文庫)

回想のブライズヘッド〈上〉 (岩波文庫)

 
回想のブライズヘッド〈下〉 (岩波文庫)

回想のブライズヘッド〈下〉 (岩波文庫)

 

 

アンソニー・トロロープのPalliserシリーズ全て。"Can You Forgive Her?"から。

Can You Forgive Her? (Oxford World's Classics)

Can You Forgive Her? (Oxford World's Classics)

 

 

 

「この順番に、2週間に 1冊読むこと。ただしトロロープは3週間に1冊でOK。読んでいくうちに、どうして私がこの読書リストを作ったか理解できるようになるでしょう」とはコンサルタントの発言。

お話は大団円で終わるが、3作目"Rich People Problems"ではまた同じ登場人物たちに会うことができますよ!

こちらのレビューも追って書きたいと思います。

かなり中毒性の高い作家です。